RubyKaigi2011 初日は、7/16 (土) の開催です。今回は大ホールと小ホールで行なわれる発表紹介です。
CRuby の開発チームによる Ruby 1.8 と Ruby 1.9 についてのお話です。
Ruby 1.8 の話題としては、1.8.7-p330のリリース後に、次期バージョンにあたる1.8.8をどうするかという議論が行なわれていました。Ruby 1.9 は、現在次期バージョンである 1.9.3 のリリースに向けて作業が行なわれています。また、1.9.3 からは Ruby のライセンス変更が予定されています。
今後の 1.8 と 1.9 についての動向が聞きたい方には、必聴のセッションになりますね。
RubyKaigi のプラチナスポンサーでもあるクックパッドのエンジニア、舘野祐一さんによる発表です。舘野さんの RubyKaigi での発表は RubyKaigi2007 以来となります。
大江戸 Ruby 会議 01 の NinjaTalk で話された、テストの高速化という内容からより突っ込んだ発表になるのでしょうか。 Ruby はクックパッドという大規模システムをどのように支えているのか。その裏側を話していただけるとのことで、今から気になるセッションですね。
GitHub に勤める Corey Donohoe さんによる発表です。
俊敏にデプロイする為にどのように Git を活用しているか話されるようです。GitHub は今やそれ自体が規模の大きい Web サイトになっています。彼らが Git をどの様に用いて GitHub を開発しているのか非常に興味深いセッションになりそうです。
Engine Yard で働いている Andy さんのお話です。
大規模な Web アプリケーションの開発していると、しばしば小さなアプリケーションの集合のような形態をとることがあります。そうした際のテストは複雑になってしまいがちなのですが、Engine Yard ではそういった問題をカバーするテクニックがあるようです。 実際に、どのようなテクニックを見せてくれるのか。今からとても楽しみですね。
RubyWorld Conference 2010 で発表された相澤さんによる発表です。相澤さんは、RubyKaigi2011 実行委員の 1 人です。
SIer の業務として実際のプロジェクトで Rails を使用した際に、今までとどう違うのか、どのような工夫が必要になっていくのか。 仕事として考える際に高い関心を持たざるを得ない部分についてを、デベロッパーとマネージャーの観点からお話をしてくれるようです。 相澤さんの経験からどのような言葉がでてくるのか、とても気になりますね。
田辺さんは慶應義塾大学とオープンソース図書館システム開発プロジェクト Project Next-L のメンバーです。 Rails で作られた Next-L Enju の開発についてお話していただけるそうです。 図書館システムが話題になっていますが、Ruby はどのように図書館システムを支える存在となっているのか。 他では聞けないセッションとなりそうです。
大江戸 Ruby 会議 01 でも発表された江森さんのお話です。江森さんは、今回人生初の RubyKaigi 参加になります。
大江戸 Ruby 会議では “mission critical” なシステムでの Ruby 活用事例として、複数の Thread を作り、各 Thread を無限ループで動作させるプロセスの状態監視やテスタビリティを高めるための工夫についてをお話して下さいました。 今回の発表でも、現場で培われたリアルなお話が聞けると考えると、とても楽しみですね。
RubyKaigi2010 では LT で発表をした中学生 sora_h さんが、今年は RubyKaigi のスピーカーとしてやってきてくれました。sora_h さんは、今年 2 月に史上最年少 (当時中学二年生) で Ruby コミッタに就任したことでも有名ですね。コミッタになったきっかけである Ruby のテスト高速化の詳細については、るびまにも書いてもらいました。
そんな sora_h さんは、中高生と Ruby コミュニティの関わり合い具合が気に掛かっているようです。自身の経験から、中高生でもコミュニティに積極的に参加した方が良いこと、しかしその数が少ないこと、そしてどうしたらコミュニティに中高生が増えるのかという解決案を提案してくれます。Ruby コミュニティが中高生の視点から語られる機会というのは、貴重なことではないでしょうか。中高生も、そうでない人も要チェックです!
須永さんは東京大学大学院の学生で、Ruby 1.9 の VM である YARV の開発者でもある笹田さんの研究室に所属しています。
今回は、ruby-list:47959でもアナウンスがあった、Rubyアプリケーションのリアルタイムプロファイラについて発表してくれます。また、リアルタイムプロファイラと言うと、RubyKaigi2010 で発表があったリアルタイムメモリプロファイラがありましたね。
このプロファイラは、リアルタイムであるのにアプリケーションに与えるオーバーヘッドが低いことが特徴です。どんなことができるのか、どのような工夫をして実現しているか等、とても楽しみですね。
池原さんは組み込みシステムの開発経験から、メモリ制約のある環境で Ruby を利用する場合の課題とその解決方法についてお話くださるそうです。
Ruby における省メモリ戦略と言えば Copy On Write フレンドリーな GC を用いた Ruby Enterprise Edition (REE) などがあり、プロダクション環境で広く使われています。池原さんのアプローチはこれと異なり、複数のアプリケーションを単一 VM で共存させる機構の実現や VM が使うデータ構造の最適化で省メモリを成し遂げ、Sinatra 動作時のメモリ使用量が CRuby 1.9.2 と比べて約 20% 低減することを確認したそうです。
組み込み Ruby というとまつもとさんが進めている RiteVM (そちらは次のセッションで!!) も思い浮かびますが、この研究は Ruby 1.9 を対象としたものであり、現在よく利用されている VM への提案ということになります。このセッションを聞き終わった後、現行 VM の省メモリ化に関する問題意識を共有できることでしょう。
RubyConf のまつもとさんの発表で、組み込みに対する Ruby の取り組みが発表されました。
この二つは、経済産業省の地域イノベーション創出研究開発事業に「軽量 Ruby を用いた組込みプラットフォームの研究・開発」事業として採択されたものです。組み込みという分野に、どのように Ruby が進出していくか、気になりますね。
CRuby コミッタの nari さんによる発表です。CRuby の GC は現在マーク・スイープ方式を採用していますが、今回 nari さんが発表されるのはそのマークの部分を並列マークに改良したことについてだそうです。CRuby の実装そのものや、GC、並列といったキーワードに興味がある人には必見とも言えるセッションでしょう。
Ruby 1.9 の VM である YARV の開発者であり、るびま創刊号から編集をしている、ささださんによる発表です。
先日行なわれた大江戸 Ruby 会議 01 では、Ruby 処理系の構想 (妄想) と題し、ささださんが考えている「Ruby に対してできること」の発表がありました (発表資料 PDF) 。今回の発表は、その続編になります。
ささださんの考える世界では、Ruby にどのような可能性があるのか。とても楽しみな発表ですね。