Rubyist Magazine の 53 号をお届けする。
今回は 4 月の年度初めの季節で、新しい環境の方も多いと思われる。 ……という書き出しで、昨年は「Rubyist のための Ruby 関連書籍ブックガイド 2015」(0050 号 巻頭言)という巻頭言を書いた。
1 年経つと多少書籍も更新されるもので、おかげさまで私が関わっている『たのしい Ruby』も改訂版が無事刊行された。 とはいえ、書籍だけだと大きく変わり映えはしないのも確かなので、今年はネットで公開されているドキュメントを中心に、 初心者向けのドキュメントを紹介してみたい。また、Ruby のドキュメントの状況についてや、 昨年から新たに刊行された Ruby 関連書籍の紹介、それと宣伝を少し書かせていただきたい。
なお、今回のレギュレーションとしては、日本語のものに限定していることに加えて、1.x 時代のものを排除している。 実際のところ、2.0 未満の文書でも使えるものは使えるし、良いドキュメントであっても必ずしも更新されているわけではないのだが、 やはり新しいバージョンに対応したドキュメントを推したい。 ここで紹介しなかったからといって、一般的におすすめできないコンテンツであるわけではないので、その点は留意していただきたい。
いきなりで恐縮だが、実は 2.x 時代の Ruby の概略をさらっと知るための日本語ドキュメントの定番 というものはまだ存在していないような気がしている。
もっとも、その程度のものであれば 1.x 時代のものでもあまり差はないので、 多少古いものでもそれほど困らない。その意味では、 「一時間で覚える Ruby」( http://mayah.jp/article/2004/ruby )、 「Ruby 言語ミニマム」( http://loveruby.net/ja/rhg/book/minimum.html )、 「Ruby 基礎文法最速マスター」(http://route477.net/d/?date=20100125 ) といった文書でも十分に役には立つ。のだが、せっかくなのでできれば新たに書き起こされたものか、 更新されているものを読みたい。
そこで先日、英語版サイトにあった”Ruby in Twenty Minutes”( https://www.ruby-lang.org/en/documentation/quickstart/ ) を日本語に翻訳してみた。『20 分ではじめる Ruby』( https://www.ruby-lang.org/ja/documentation/quickstart/ )が それである。主に irb を使って、簡単な Ruby の制御構造やクラスの定義方法などが紹介されている。
外部のコンテンツを探して見つけたものとしては、 「黒澤ルビィと学ぶ Ruby 入門」( http://learn-with-muse.sato-t.net/?page_id=4986 ) があった。ラブライバー向けの Ruby 入門、という少し(だいぶ)狭いターゲットの向けのコンテンツだが、 「SchoolIdol は Idol を継承している、つまりスクールアイドルはアイドルであるという is-a の関係だったよね」などといった 分かりやすいのかどうか良く分からない文章が好きな人にはたまらないもの、かもしれない。
また、最近は動画で入門する方も多いだろう。動画といえば、ドットインストールの Ruby 入門( http://dotinstall.com/lessons/basic_ruby_v2 )が よく知られているのではないだろうか。細かなトピックに分かれて、Ruby の構文や基本的なクラスについて、短くテンポのよい動画で学習できる。
もう少し突っ込んだものを、ということになると、やはり「るりま」こと Ruby リファレンスマニュアル( http://docs.ruby-lang.org/ja/ )を読むのが一番確実だろう。 検索機能として「るりまサーチ」( http://docs.ruby-lang.org/ja/search/ )も合わせて活用していただきたい。
Rails についても触れておこう。
Rails の入門用ドキュメントと言えば、やはり昨年の記事でも紹介した「Ruby on Rails チュートリアル」( http://railstutorial.jp/ ) がよく知られている。 こちらは改訂版の翻訳も現在進行中だそうなので、期待して待ちたい。
また、動画コンテンツとしては、先ほど紹介したドットインストールでも『Ruby on Rails 4 入門』( http://dotinstall.com/lessons/basic_rails_v2 )を公開している。 なお、動画といえば「Rails チュートリアル」も動画を有償で公開している( http://railstutorial.jp/screencasts )ので、興味があればそちらも参考にしていただきたい。
また、このサイトを読んでいる人には簡単すぎるかもしれないが、プログラミング初心者でもいきなり Rails を 使うことになることはあるわけで、そういう人のためには igaiga さんの『Rails の教科書』( http://igarashikuniaki.net/rails_textbook/ )がある。 『Rails チュートリアル』をみてちょっと手強く感じられた方にはこちらをお勧めしたい。
先ほど書いた通り、『20 分ではじめる Ruby』の日本語版が公開されたのはつい数日前のことだ。 英語版はかなり前から存在していたのだが、日本語では読めなかった。 日本では「ruby ユーザガイド」というまつもとさんによる文書が公開されていたのだが、なにぶんコンテンツが古くなってしまったため、 現在はサイトからは削除されている (当時の内容は http://step0ku.kugi.kyoto-u.ac.jp/~shiny/lib/ref/ruby/ruby-uguide/uguide00.html より閲覧できる。 また英訳されたものは http://www.rubyist.net/~slagell/ruby/ で公開されている)。
また、最初に書いた通り、ネットでは 1.8 や 1.9 時代のコンテンツも多く、 初心者がとりあえず Ruby を学習するにあたって、インターネットを活用して 情報を得ることは、実は以前よりも容易ではなくなりつつあるのではないか、 という危惧がある。
もちろん、書籍などのコンテンツではその辺りの改訂も行われているのだが、 本を買わないと勉強できないというのではあまり望ましい状況ではない。 Ruby の会でも、もう少し積極的に活動した方がよいのではないかという話を理事の中ではしているが、 興味のある方は積極的にドキュメントの作成・公開を試みてほしい。
ついでに、昨年の紹介記事のあとに刊行された Ruby 関連書籍を紹介しておきたい。
今年の 3 月をもって京都女子大学を退官された小波先生の Ruby 入門書。実は私が NextPublishing を紹介したので、個人的に感慨深い一冊である。
あんまり Ruby の本ではないけれど、ふと Ruby で( Ruby じゃなくても) Quine を書きたくなった時に読む本。
「Rubyist のための Ruby 関連書籍ブックガイド 2015」でも紹介した、 Ruby でメタプログラミングをする、あるいは Ruby のメタプログラミングのコードを読み解くためには必読であった 『メタプログラミング Ruby』の改訂版が無事翻訳された。今後はこちらをお勧めしたい。
こちらもあんまり Ruby の勉強をするための本ではないが、Ruby の API がどうしてこうなっているのかがよく分かる。 ある意味ではこれほど勉強になる本もないだろう。amazon の評価の低さにはある意味驚愕を隠せないが、そんなことは気にせずぜひ読んでいただきたい。
後藤裕蔵さんと私で書いた Ruby の入門書の改訂版が無事に出た。入門書としては一定の評価は得られている、と勝手ながら思っている。
そして最後に手前味噌だが、私が関わっている有償コンテンツについて紹介させていただく。
最初にほど挙げた「Rails チュートリアル」や「Rails の教科書」についても、電子書籍版が弊社で販売している。
また、『たのしい Ruby 第 5 版』についても、SB クリエイティブ社にお願いして弊社サイトでも販売させていただいている。
興味があればご購入ください。
(るびま編集長 高橋征義)