RegionalRubyKaigi レポート (53) とちぎ Ruby 会議 06

とちぎ Ruby 会議 06

はじめに

2015 年 6 月 20 日、とちぎ Ruby 会議 06 が開催されました。 今回のテーマは「大切にしていること」です。とちぎ Ruby の会(toRuby)が 100 回を越えた節目の年ということで、Ruby の父まつもとゆきひろさんを迎え、「大切にしていること」をテーマに様々な発表が行われました。

日時
2015/06/20(土) 13:00 ~ 17:00 (開場 12:30)
会場
東那須野公民館
主催
とちぎ Ruby 会議 06 実行委員会
後援
日本 Ruby の会、とちぎ Ruby の会(toRuby)
参加者
約 50 名
懇親会
ダイニングバーウニコ

基調講演

まつもとゆきひろさん - 「怠惰」のスゝメ

概要

基調講演は、まつもとさんの昔の写真と共に、Ruby が誕生するまでのバッググラウンド、これからの Ruby の方向性についてお話がありました。ポケコンしか持たない少年が、自分の言語を作りたいと夢見、それをずっとあきらめなかったからこそ、実現した Ruby。その後、デビットトーマスら達人プログラマーとの出会いに後押しされ、世界中に広まっていく Ruby とそのコミュニティ。そして 20 年経ち、時代の変化に対応するための新たな取り組み…。どれも興味深い内容で、様々なお話を頂きました。

「Ruby が好きだから。そして Ruby がくれるパワーが好きだから、もっと頑張らないといけない。もっと働き続けなければいけない。」最後にこう言いながら、Ruby コミュニティへの愛情が示された、温かい講演でした。

感想

WEB 業界で働く身としては、まつもとゆきひろさんという方は近くて遠い存在、という印象でした。ですが、今回のとちぎ Ruby 会議でその気さくな人柄に驚きました。まつもとさんが中心となって Ruby を作っていくなかで、その人柄だからこそ継続できているという部分も多かったのかなと思いました。(稲見)

Ruby が生まれた背景となる、「気分の良い言語」というコンセプトは、とても共感できました。プログラミングは楽しみながら気持ちよくやりたいものですよね。そのコンセプトを大事にしながら苦悩し、アドバイザ達の助けを受け、地道に Ruby を作り上げていったとのこと。自分も一つのコンセプトを持ち努力し続ければ プログラミング言語が作れるかも?とワクワクさせてくれるような内容でした。(角田)

全体を通して感じたのは、夢を持ち続け実現することの大切さです。そしてその夢に共感した人たちとの出会いによって、夢の発展があるのだなと感じました。Ruby コミュニテイは、まつもとさんの夢と共鳴、協調しあい、それはまた互いの新しい夢になるのだと思います。Let’s have the same dream! (大垣)

一般講演

酒匂 寛さん - 7 を数える

仕様と設計の違いを直感的に理解することがテーマです。IT エンジニア向けサイト「CodeIQ」の 7 を数えるという話題(コード銀行:「7」の数を数えよう)が元ネタになります。

  • 仕様:「何が」欲しいかを定義したもの
  • 設計:仕様をどのように実現するかを決める行為

という説明を「7 を数える」プログラムコードを実際にみてもらいつつ、仕様と設計の違いを説明していただきました。

早川 真也さん - プログラマが「技術」よりも大切にしていること

機能を実現することに捕らわれず、あらゆる視点から考え出すのがアートの世界。そして、夢を伝えるのがアートだと、早川さんは言います。そんなアートな生き方が、より良いソフトウェア、サービス、ビジネスにつながっていくと考えているそうです。夢が人を動かしていく。早川さんは 100 年後、1000 年後の社会に自分の夢を伝えていきたいと話されていました。

最後に、タイマーのプロジェクションマッピングを引き受けたが間に合わず、謝罪をしていた早川さん(笑)。次回のとちぎ Ruby 会議では是非とも実現していただきたいです。

安川 要平さん(@yasulab) - Rails チュートリアル/Rails ガイドで僕が大切にしていること

toRuby でも大変お世話になっている「Ruby on Rails チュートリアル」の中の人です。

1,700 ページもある英語の原文を翻訳するにあたり、全て人間の目で確認することは不可能です。また、組織として活動するにあたり、利益を上げていかないといけません。それを実現させている方法を教えていただきました。Google Translator Toolkit などをつかった自動翻訳の仕組み作りで効率的に翻訳、電子書籍の販売で利益を出す運用をされているそうです。

池澤 一廣さん(@awazeki) - 私の Ruby

toRuby の生みの親である池澤さん( 2007 年に池澤さんが関さんへ声をかけたことがきっかけ)。

相反するものが共存し、複雑なものがシンプルに実現できる Ruby の哲学。また、Ruby の楽しさに加え、Ruby のコミュニティの楽しさ。こうした toRuby を通して経験してきた楽しさを、社会へ広げていきたいと考えるようになったそうです。

まつもとさんが基調講演で語られていた、大切にしているという Ruby の哲学やコミュニティ。それをしっかりと受け取っているという、アンサーソングのような講演でした。

まみぺこさん(@mamipeko) - インターネットちゃんブログのつくりかた

Web デザイナーのまみぺこさんが運営している「インターネットちゃんブログ」についてのお話しでした。

インターネットちゃんブログとは「ブラウザネイル」がバズったことがきっかけで続けているブログです。PV 数を気にしたりアフィリエイトをやってるわけではなく、自分自身と友達の「好き」のために楽しくやっています!というお話しでした。

資料

インターネットちゃんブログのつくりかた

原 信一郎さん - 偶然

長年、確率統計を教えている原先生自身が、よくわからないという「偶然」についての講演です。

昨年のお正月に原家(ほとんど原さんの奥様)を襲った 5 連続不運を立証すべく、○と×を幸運と不運に見立て、不運の連続を Ruby でシミュレーション。すると、8 連続不運の多発や、13 連続不運も起きる結果に…。不運は続く。だから肯定否定、悲観楽観、全て間違っているとのことでした。(奥様には、もっと優しい言葉をかけたと、信じています…。)講演の最初に「もやもやすることを伝える」「何かわかったと思われたら、私の伝え間違いだ」と言い切り、会場を爆笑させていた原さん。偶然は続く。なぜなら”偶然”だから。循環論に陥り確かにもやもやします。

資料

偶然

勉強会

特別講師 笹田 耕一さん - アンダースタンディングコンピュテーション

とちぎ Ruby 会議の開催母体である toRuby で定期開催されている勉強会を行いました。toRuby では現在「アンダースタンディングコンピュテーション」の朗読、写経を行っています。

今回は監訳者である笹田さんによる朗読を交えた勉強会となりました。全員で内容を確認しながら、適宜 Q&A を行うというスタイルで進めていきました。後半には抽象構文木を作るという実演がありました。PC 持参の方は実際に構文木を作り、周りの方も一緒に検討するという場面が各席で見られました。「意味」の意味や意味論など、抽象的な概念がテーマになっており、なかなかハイレベルな内容だったと感じました。

さいごに

実行委員長中内さんの言葉にもありましたが、今回、まつもとさんをお呼びするにあたり、実は心配もありました。それは、まつもとさんの存在感に引っ張られ、今までのサロン的な雰囲気が壊れてしまうのではないか?ということです。ただし、終わってみればただの杞憂。いつもの toRuby のまま終えることができました。そして、toRuby が「大切にしていること」。それを、とちぎ 06 に参加していただいた皆様に、感じ取っていただけたのではないでしょうか?

まつもとさんの帰り際、次のようなお言葉がありました。赤の女王に「その場にとどまるためには全力で走らなければならない」という台詞がある。Ruby が生き残り、さらに先に進むためには、全力のその倍で走り続ける意気込みでいる、と。では toRuby はどう進むのか?おそらく前に進むというより、もっと高く昇っていくのだと思います。toRuby の楽しさが、より高く、そしてより強く洗練されていき、今後も toRuby らしさは継続されていくのだろうと感じました。

toRuby の勉強会の詳細です。

  • 月例勉強会 : 毎月第一水曜日 18:30 ~ 西那須野公民館
  • 分科会 : 毎月一回 流動的ながら主に土曜日 今泉地域コミュニティセンター

書いた人

大垣 昌紀
東京在住。でも心はtoRuby。
稲見 宏之
栃木を愛するWEB系エンジニア
角田 祥太
Rubyの勉強と子育てに奮闘中

謝辞

新宿区荒木町の珈琲専門 猫廼舎さん

会場にて挽きたてコーヒーを淹れてくれました。講演中に広がるコーヒーの香り、豆を挽く音がとても新鮮に感じました。あの和やかな雰囲気は猫廼舎さんが作られたと言ってもいいでしょう。珈琲専門猫廼舎は四谷三丁目、もしくは曙橋からが便利です。お近くに行かれた際は、コーヒーを楽しみに立ち寄られてみることをお勧めいたします。

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珈琲専門 猫廼舎

オリジナル T シャツ作成サービスの tmix さん

toRuby スタッフの鎧となったスタッフ T シャツをご提供いただきました。各地の Ruby 会議のスタッフ T シャツを作成しておなじみですが、もちろん Ruby と関係ないデザインもオーダー可能です。イベントに、プライベートに、ぜひご利用ください。

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株式会社 spice life tmix