0032 号 巻頭言

日本 Ruby の会法人化現状報告

Rubyist Magazine 第 32 号をお届けする。

今号は、 Ruby 関西方面ではもはや古参と言ってもいいような気もする Cuzic さんのインタビューの Rubyist Hotlinks 【第 26 回】 cuzic さん、 急遽始まった、桑田さんが Jared Carroll さんのブログ記事を紹介する 海外記事翻訳シリーズ 【第 1 回】 RSpec ベストプラクティス、 知ってるようで知らない人もいる「値渡し」「参照渡し」「参照の値渡し」の違いを教える 値渡しと参照渡しの違いを理解する、 ちょっと報告が遅くなってしまったところも Tokyu っぽくていい感じのレポート記事 RegionalRubyKaigi レポート (16) Tokyu Ruby 会議 02、 そして 0032-RubyNewsRuby 関連イベント となっている。


以前から事あるごとに触れているように、日本 Ruby の会の法人化について検討を進めている。今回はその現状報告を行いたい。

結論から言うと、一般社団法人として法人格を持つことを考えている。 そのためのタイミングとしては、日本 Ruby 会議 2011 の終了後、現在の第 6 期が終わったタイミングで、 現在の任意団体から、一般社団法人への移行を行うという流れを想定している。

一般社団法人になることについては、いくつか懸念事項があった。 一番重要なこと(かつよく分からないこと)は、具体的な約款の整備、そしてそれに対応した体制をどうするか、といったところである。 とりわけ、現状は会長の権限が強いのだが、それをどのように変えるか、さらに一般会員と理事の関係をどうするかを考慮する必要がある。

具体的な問題について考える前に、法人化の目的について整理しておく。 法人化のメリットの一つは、法人格という特殊な「人格」が持てることである。 これにより、カネやモノについて、個々人ではなく Ruby の会として保有できるようになる。

任意団体の場合、意味合いとしては団体に属するものにしても、いざ契約となったり金銭のやりとりをする場合、その帰属先はどうしても個人になる。 これはその担当者にとっては、金がたくさんあっても面倒なものだし、逆に計算を間違えて少なくなりすぎると個人で建て替えることになりかねない。これはうれしくない。 さらに、あまり多額になるときっちりとした扱いが必要になる。 幸か不幸か現状の RubyKaigi では「多額」と言えなくもないくらいの予算規模になってきており、このまま任意団体でやり続けるよりも、法人とした方がいいのではないかと思えるようになってきている。 以前も書いたように、次回の RubyKaigi が最終回となるのは、このような Ruby の会の体制の変化とも深く関わっている。 付け加えると、法人化によって、「ヒト」、つまり社員を雇うことも可能になる。が、現実的に Ruby の会が社員をたくさん雇うような事態は、近い将来にはあまり想像できない。

というわけで、もしそのままの体制で Ruby の会がそのまま法人となれるのであれば問題ないのだが、社会的にも存在を認められる法人となるには適当な会則などは問題がある。 さらに、特に営利を目的とせず、税金も正直あまり払わないでおきたい Ruby の会のような団体は、高い公益性を持つ団体にする必要がある。そのためには、守らなければならない約束事もある (らしい。あまり詳しくはないのだが) 。

法人化した場合、意思決定は民主的に行われることになる。 そもそも、定足数が決まっている場合、その定足数に満たない場合は物事が決められない。 下手に規約を作ると、将来なにか問題が起きた場合、 意見が割れてしまうと活動を起こすことも起こさないことも決定できない、 といった状況になってしまうこともあるらしい。このようなことを避けられる程度には、 あまり重い規約にならないよう注意が必要となる。 一方で、簡単に変更ができるようになっていても困る。 例えば悪意を持った人たちが多数徒党を組んで現れ、 チートのように会の運営権を握る、ということになってしまってはまずい。

そのため、自由に登録でき、かつ多数決で意思決定ができる、といったことが起こらないような制度設計が必要になる。

このあたりのさじ加減については、Ruby の会よりも先に法人化していた、一般社団法人 LOCAL の方と縁があり話を聞いてみて、その仕組みを参考にさせていただいた。 組織形態としては、会費を払う正会員と、現在の ML の構成員である一般会員とに分け、前者のみが運営上の意思決定に参加でき、かつ別の正会員の推薦がなければ新たに正会員になることができない、という仕組みである。 そして、メンバーとしては理事が正会員とほぼ一致する形になる。 もっとも、正会員であっても理事ではない、あるいは理事を辞めても正会員でい続けることはあるかもしれない。詳しくは差があるが、位置づけとしては近しいところにある、というイメージである。

結局のところ、Ruby の会のような団体は、そこにいる「人」がすべてである。 先ほどカネやモノの所有ができ、安定するようになると書いたが、「ヒト」については結局のところ安定的に確保するのは難しい。 活動内容からして属人的な要素が高い。 そこは避けがたいところなのだろう。 とすれば、せいぜいできることはと言えば、アクティブに動く人を拾い上げ、その人に活躍の場を用意することぐらいである。 その循環ができる程度に器をしっかり用意しておくことが、法人化によってできることの限界だろう。

そんなわけで、ルールとしては複雑さが増すのだが、運営の実体としてはあまり変わらないことになると思われる。

とはいえ、まだ約款の叩き台ができただけで、具体的なステップは決まっていない。 加えて、法人化した後の活動内容についても今後の課題として残っている。 これらについても、色々な方から意見を聞きつつ決めていきたい。