Rubyist Magazine 4周年に寄せて

著者:笹田耕一

はじめに

おかげさまで、Rubyist Magazine は 4 周年を迎えました。そこで、今年 1 年間のるびまについてまとめ、今後について考えてみたいと思います。

現状

まず、確認してみると4 年目はこの 24 号含めて 3 回しかリリースしていません。

12 月、3 月、10 月です。なかなか期間があいており、数が少ないのが響いているなぁ、という感じです。

記事としては、恒例のインタビューは Rubyist Hotlinks 【第 21 回】 原信一郎さん だけになっています。これは、ひとえに私の怠慢で、楽しみにしている人には申し訳なく思っています。

連載は、角谷さん、諸橋さんが Zunda さんの編集サポートの下で RSpec を解説する「スはスペックのス」、ゴルフ場オーナーによる Rubyist のためのゴルフレッスン「るびまゴルフ」、西山さんによる長寿企画「標準添付ライブラリ紹介」、しまださんの努力による RubyNews、RubyEventCheck がありました。我らがまつもとさんによる「Rubyist のための他言語探訪」はちょっと中断していますね。

単発記事としては、桑田さんによる精力的な記事群 RubyKaigi2007: C より速い Ruby プログラムRagel 入門: 簡単な使い方から JSON パーサまでcgi.rb がイケてない 12 の理由エラー発生箇所を自動的にエディタで開く EditorKicker があります。桑田さんは今回からまた連載を始めていただきました。テンプレートシステム入門 (1) 歴史編テンプレートシステム入門 (2) 基礎編 でなんと 2 回分。あとは Ruby Conference 2007 レポート で畠山さん、角谷さんから世界の Rubyist の活動レポートがありました。

おっと、高橋編集長の巻頭言がありました。ちゃんと続いています。

4年間で 24 号ということで、平均 6 回リリース / 年。1 年目は 8 回リリースしていたのが効いています。記事数では 302 記事、12.5 記事 / リリース、75.5 記事 / 年。ということになります。

ささだはほとんどるびまリリースに貢献することはなくなりまして、例えば進行は小西さんが担当してくださいました。他にも、うえださん、なかむら (う) さん、すぎむしさん、たむらさん、むらまささん、くげさん、等々に編集をご協力いただきました。ありがとうございます(抜けている方がいらっしゃったらすみません。編集 ML から名前をピックアップしました)。

現状分析

見たとおり、るびまは最近リリースされていません。つまり、活動が停滞してきたと言えるかと思います。年 4 回であれば季刊ということもできるかもしれませんが、それを割って 3 回になってしましました。

この停滞について、いくつか理由があるのではないかと思いますので、少し分析してみます。

  • るびまの中の人のやる気がなくなった
  • るびまの中の人の時間がなくなった

私はまさにこの状態で、本業で忙しくなった(そう、本業が Ruby に対する貢献では、そろそろなくなってきているようです)ので、るびまに貢献する時間が取れなくなったというのは確かにあります(あと、1.9.1 の準備とかで忙しいとかなんとか)。

るびまにおける私の役割は、執筆者を集めてきたり、積極的に「リリースしようしよう」と騒いだりする係だったので、そういううるさい人が居なくなったのは、るびまを停滞させた原因の一つではないかと思います。

その他の編集者の方々には、なかなか顔を出さない人も多いですが、今でも精力的に作業をしてくださる方もいらっしゃいます。なので、一概にメンバーの士気が低い、というわけではありません。しかし、一時期よりもアクティブメンバーが少なくなっているという気はします。

  • るびまの存在意義がなくなった

るびまじゃなくてもいいんじゃない? という話です。ポジティブな言い方をすれば、「るびまの役割を全うした」と言い換えることが出来るかもしれません。Ruby に関する情報は、以前と比べて大変豊富になりました。ウェブサイトを検索すれば、いろいろな情報が手に入ります。また、Ruby リファレンスマニュアル刷新計画も着実に進んでおり、ドキュメントに関する取り組みは活発になっています。

また、Ruby 会議に限らず、Ruby に関するイベントや勉強会が多く開催されているというものがあります。

ただ、それぞれが情報発信をしているのですが、なかなかまとまっていないな、という印象があるので、それをまとめる情報源があるといいなぁ、と思います。それがるびまであるべきかどうかはわかりません。使って貰えるといいのではないかな、とは思います。RubyArticleCheck なんて記事企画があればいいのではないか、というアイデアはありますが、なかなか体力的に実現が困難な状態です。

そういう意味では、インタビュー企画はやはりるびまのような動機がなければ出来ない企画だったと思うのですが、この企画、そしてそれに類する企画をまだまだやりたいなぁ、という思いはまだまだあります。が、なかなか実現するだけの力がない感じです。

去年の記事 Rubyist Magazine 3 周年 を見てみると、色々書いていますが、あまり状況は変わっていないような気がしますね。このころから、変わらずに停滞の方向になってきている、ということかと思います。「こうしよう」という提案もないので、従来の方向性を維持しながら進めている、というところかと思います。

そういえば、去年の記事には「お金」の話が書いてありますね。私は寡聞にしてお金でこのあたりのまとまったドキュメントに関するプロジェクトが成功した、という話は聞かないのですが、なかなか難しいというところなのでしょうかね。それとも、あまりお金に関しては昔と変わらないのかなぁ、とか。

今後

結局、去年の繰り返しになっているんですが、「なるようになる」でいいんじゃないかと個人的には思っています。誰かがやりたければやってもらえればいいし、誰もやらない、誰も必要としないのであれば、自然と終わるのではないかと思います。

一度、るびま関連のイベントをやってみたいというのはあるのですけどね。インタビューを受けてくれた人を招待して、生で話を聞いてみるとか。そういう希望はあるので、個人的にはまだ続けていけたらいいなぁ、と思っています。

るびまを続けていきたい人、何かやってみませんか? るびまを引っ張ってみませんか?

著者紹介

笹田耕一。1979 年生まれ。2004 年東京農工大学大学院工学研究科博士前期課程情報コミュニケーション工学専攻卒業。2006 年同大学院工学教育部博士後期課程電子情報工学専攻退学。同年東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手、2007年同助教、2008年同講師 (現職)。オペレーティングシステムやシステムソフトウェア、並列処理システム、言語処理系、プログラミング言語に関する研究に興味を持つ。情報処理学会、ACM各会員。日本Rubyの会理事。

なんか、いつの間にか研究室をもつようになってしまいました。共同研究は随時募集中です。Ruby を高速化したいと思っている方、ぜひご一報を。