Rubyist Magazine 二周年を迎えて
著者:笹田耕一
おかげさまで Rubyist Magazine は二周年を迎えました。そこで、Rubyist Magazine の現状を述べ、今後どのようにしていくべきかについて考えてみます。
二年目を新しい順に並べてみます。
一年目が 8 回リリースで、二年目が 7 回と特別号が 1 回リリースということになりました。後半は 1 月ではなく 2 月間隔になっています。
驚くべきことに、締切りは全部守っています。落ちてしまったリリースはありません。もちろん、細かい締切りの延長などはよくあるんですが、この月に出す、という宣言は未だに守っています。ただし、落ちてしまった記事はあります。
今年 6 月に RubyKaigi 2006 があったため、はじめて特別号を出しました。特別号は、通常の体制ではなく、Rubyist Magazine 編集者から募った有志がロガーとして中心に活動し、加えて RubyKaigi 2006 参加者からボランティアを募って編集しました。
また、Perlish Magazine を発行しました。これも Rubyist Magazine 編集者より有志を募りましたが、Perl コミュニティの方々にも協力していただきました。個人的には、学生最後の春休みはこれで潰れました。
システム的には、昨年度よりVolumeIndicesおよびCategoryIndicesが追加されました。
Rubyist Magazine の記事内訳については、111 記事 (編集後記など含む) となり、8 回のリリースなので、平均 13.8 記事ということになります。連載については、とりあえず Rubyist Hotlinks (インタビュー記事) がずっと続いており、標準添付ライブラリ紹介も今回で 9 回目になります。まつもとさんやゲストによるRubyist のための他言語探訪も今回で 9 回目、順調に続いています。
異色の記事としては、一度だけ求職情報を掲載しました。ですが、残念ながらあんまり効果がなかったようです。お礼をどうする、などの面倒な話になってしまったので (しかも、効果がなかったのだし)、正直失敗だったかなぁ、と思っています。が、またオファーがあれば考えます。
プレゼント記事はなんとなく続いています。ただ、なぜかプレゼントに応募できないボランティアの編集者が手間と郵送料をかけてプレゼントを送っているという現状はとっても不健全だなぁ、と思うので、縮小方向に、できればコストをかけずに行える方法を模索していきたいと思っています。
現状を一言で表すなら「人手不足」です。例えば、今回の 0016 号を見てもらえるとわかるとおり、多くの記事の編集を笹田が行っています。できれば、他の方に代わってもらいたいのですが、手を挙げてくれる方が居ないというのが実情です。
また、個人的なことですが、予想外に今年度から笹田は就職してしまったので、以前より編集作業に時間が取れなくなってしまいました。
最近、記事採用ポリシを変更して「編集者がつかない、立候補がいない場合は、記事の企画を断る」ということになりました。そのため、建前としてはどの記事にも編集者が着いているということになっていますが、同じ編集者がいくつかの記事の担当編集をやっているというのが実情です。
RubyKaigi 2006 でのボランティアスタッフの募集では、30 人を越える応募がありました。Ruby に貢献しようという人はたくさん居るんだけれど、継続的に地味な作業を行うのは嫌だ、ということではないかと思います。個人的にはとても納得できる話で、たとえば Ruby のバグ (勝手に) トラッカーのメンテナンスをやれといわれてもなかなか出来ないです。そう考えると、これだけ長く続いたことのほうが驚くべきことなのかもしれません。
最近 Rails についての書籍が 5 冊 (もっと?) も出ましたし、雑誌にも Ruby の記事が増えてきました。また、今号の書籍紹介のように Ruby についての書籍も出版されました。ウェブを見回せば、ブログなどで Ruby についての解説なども散見されます。
その分、Rubyist Magazine の必要性、注目度は薄れてきたのではないか、というのが最近思うところです。たとえば、リリースされたとき、ブログなどで特に話題になる号はありませんでしたし、ソーシャルブックマークサービスなどを見ても、とくに注目されてはいないようです。
Rubyist Magazine が不要なほど、世間に Ruby の情報が溢れている、というのは、まったくもって喜ばしいことです。すべてボランティアのみで続けてきた「るびま」の役目を全うしたと考えると、それは素晴らしいことです。
もしかしたら、反応が無いことは、「あって当たり前」ということになっているのかもしれません。それだけ安定してリリースしてきたことの効果かもしれませんが、毎回やっと出している、いつ息絶えてもおかしくない、という現状を考えると意識の乖離を感じます。
さて、このまま Rubyist Magazine を続けていくべきでしょうか。
例えば今、青木峰郎さんが中心となって Ruby リファレンスマニュアル刷新計画が動いています。Ruby のドキュメント、とくに日本語については閲覧手法について不十分であることを指摘されていまいたが、システムを一新することでこれらの不満を一気に解決しようという、すばらしいプロジェクトです。Rubyist Magazine をやめてることで、ボランティア人員をそちらにまわすことを考えたほうがよいでしょうか。
お金があればなんとかなるでしょうか。たとえば、Rubyist Magazine について一番コストがかかっている作業はインタビューのテープ起こしおよび編集ですが、その部分をお金を払って外注、という形にできるといいのかもしれません。しかし、技術的な内容が多いので、いろいろ難しいかもしれません。
フルタイムで一人 (そんなにもいらないか) Rubyist Magazine 専属の方を雇うようなお金がどこかにあればいいのかもしれませんが、明らかに現実的ではありません。
そもそもお金のことを考えるのなら、収入源が必要ですが、そのあても管理するための仕組みもありません。
インタビューを文字起こしするのではなく、PodCasting のような形式で、音声ファイルを配布するというのも手かもしれませんが、編集作業をできる人がいないので難しいというのが現状です。また、オフレコの扱いなども難しそうです。もし、「任せろ!」という人がいらっしゃいましたらご連絡ください。
ウェブで技術記事を出している媒体はいくつかあるので、それらに統合してもらうというのもいいかもしれません。少なくとも管理コストの低減が期待できます。
もし、実効性のあるような案がありましたら、ぜひ教えてください。「うちの○○を使えば」とか、なんとか、そういう具体的な提案を歓迎します。
いろいろと書いていますが、まだ私は Rubyist Magazine を継続することに意欲があるので、もうちょっと続けると思います。「止め方が問題だ」とか「継続する動機」がどうの、とかそういう難しいことはおいといて、とりあえず面白いからやる、つらかったらもう止める、というように、気楽に考えてやっていこうと思っています。
もし、いつの間にか Rubyist Magazine の刊行が止まっていたら、「あぁ、力尽きてしまったんだな」と思ってください。
本稿では Rubyist Magazine の現状を概観し、今後について述べました。まぁ、いつまでかわかりませんが、飽きるまで気楽にやってみようと思います。
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笹田耕一。1979 年生まれ。2004 年東京農工大学大学院工学研究科博士前期課程情報コミュニケーション工学専攻卒業。2006 年同大学院工学教育部博士後期課程電子情報工学専攻退学。同年東京大学大学院情報理工学系研究科特任助手。オペレーティングシステムやシステムソフトウェア、並列処理システム、言語処理系、プログラミング言語に関する研究に興味を持つ。情報処理学会会員。