この記事では、韓国の Rubyist と九州の Rubyist を紹介します。東京ではあまり知られていない Ruby Community を紹介することで、今後の交流の一助となれば幸いです。
あらいしゅんいち (新井俊一) は、福岡市在住の Rubyist。2004 年に Ruby をはじめてから、即座にその言語の虜になりました。いまは仕事の 90% を Ruby でこなし、顧客にRuby で作ったシステムを納品している日本では珍しいタイプの開発者です。
あらいしゅんいちの会社、Mellowtone は顧客と共同作業でシステムを作り上げることが得意技です。単に発注されたものを作るのではなく、一緒になって考え、試行錯誤しながら、価値を生み出すソフトウェアを作り上げます。そのためには Ruby のアジャイルさが不可欠の要素です。
RubyConf 2005 に参加して Rubyist の温かさに心を打たれたあらいは、Ruby Community に貢献したいと思っています。ドキュメントを書くのも、綺麗なコードを書くのも苦手なので、ここはひとつ「るびま」に記事を書くことにしました。
韓国のソフトウェア事情は日本とは異なっています。
Windows で C++ をバリバリ使うゲームプログラマが多く、ウェブなどでも Active X を利用したコンポーネントなどが広く使われています。銀行でネット取引を利用するにも Active X コンポーネントをインストールせねばならなかったりして、Mac ユーザは悲惨な思いをしているようです:P
CGI、Javascript を多用した複雑なウェブサイトも多く見受けられます。たとえば、このスターバックスのサイト (http://www.istarbucks.co.kr/) など、勘弁してくれというようなつくりです。内容が全くないのに、見た目だけは派手になっている典型的なダメサイトです。
その一方、力技を駆使してオンラインゲームを作ったり、独特の画面構成のサイワールドを成功させたりと、日本とは大きく異なるネット文化には興味深い事例も数多くあります。
雑誌文化が定着していない韓国では、プログラミング雑誌は現在一誌しかないとのことです。なぜか日本にくらべ、書店も少なく、技術書を置いてる書店は数が少ないようです。とはいえ、ソウルの教保文庫では、洋書を含む多数の技術書を扱っているので、もし興味があれば覗いてみてください。
残念ながら Ruby は韓国では全く有名ではありません。Python までは何とか名前を知っている人はいても、Ruby は名前すら知らない人が大半ではないでしょうか。わりと力技でプログラミングをする人が多い印象があるので、Ruby がどこまで通用するか、とても興味深いのです。
ライフサイエンスを専攻する大学院生であったが、プログラミングの面白さに目覚め、情報系の大学院に再入学したという経歴の持ち主。Rubyist ではない。韓国で Squeak を普及させるという使命に燃えている。
生粋の言語オタク。RubyConf 2005 で会ったときは Io を使っているといっていたが、ソウルで会ったときには J 言語を勉強中でした。本業はアジャイルコンサルタントとのことです。企業に開発プロセスの指導などをしているようです。とくに Rubyist ではないものの、Ruby コミュニティにも注目しているらしい。奥が深い。
韓国 Rubyist の中心人物で、rubykr.org の主宰者でもあります。現在は Programming Ruby と Aglie Web Development with Rails を韓国語に翻訳中とのことで、要注目です。rubykr.orgでは フォーラム で議論がかわされている模様です。
訳書がでれば、韓国でも Ruby の知名度が少しは上昇するんじゃないでしょうか、とても楽しみです。
仕事では Delphi を使って業務アプリを作っているが、いまは Ruby に強い興味を持っているエンジニア。http://neoic.co.kr/ という会社の代表をしています。
2005 年 10 月におこなわれた RubyConf 2005 にはアジアからの参加者も登録されており、そうした人々と会えるのが大きな楽しみでした。実際に参加してみると、アジアからの参加者は日本と韓国だけでしたが、世界からの大勢の参加者がおり、楽しい時間をすごすことができました。
そこで出会ったのが、Kim Seungbum 氏と Kim June 氏の二人です。彼らは Rubyist ではないのですが、OOPSLA に来るのだからついでに RubyConf も見物しようという考えで参加をしていました。韓国においても先進的プログラマの間では Ruby が注目キーワードになっているのでしょうか。
ランチの席で知り合って名刺交換をしたのですが、Kim June 氏の肩書きは「Agile Consultant」となっています。フリーランスのコンサルタントをしているとのことですが、面白い活動をしているなと思いました。
Kim Seungbum 氏は名刺ではなく、「Squeak アクションカード」というものを持ってきていました。Sqeuak の宣伝とコードが載っている名刺大のカードで、それを渡して Squeak の宣伝をするのだ、と張り切っていました。
私も OOPSLA まで参加したので、一緒に色々と話している間に仲良くなりました。一緒に日韓のプログラマで何かやれたらいいね、などという話もでましたが、言葉の壁が問題ですね。
2006 年 1 月、久々にソウルを訪れました。
私は韓国に三ヶ月滞在していたことがあり、ソウルに友達がいます。そのため、ちょくちょくソウルに遊びにいく機会があります。とても寒いというので防寒対策を整えつつ、RubyConf で出会った二人に連絡し、韓国の Rubyist との会合をセッティングしてもらいました。
夜にソウル市内新村 (シンチョン) の駅で待ち合わせをしました。新村は私がむかし住んでいた街で、とても思い出深いところです。なかなか皆が揃わないので、まずは駅のそばにある Twosome Place という喫茶店でお茶を飲みながら話をしました。
そのあと皆が揃ってから近所で夕飯 (蒸し豚など) を食べたり、お茶 (韓国伝統茶) を飲んだりしながら、色々な話をしました。
言葉の壁もあり、あまり細かい話ができなかった部分があるのですが、韓国の Rubyist も熱いです。Ruby と Rails の書籍を翻訳し、一気に韓国にも Ruby 旋風を巻き起こす意気込みでいます。
写真は左より Seungbum 氏、あらい、June 氏、Nohmad 氏、Kabyeon 氏
最後には Kim June 氏の提案によって、私と Nohmad 氏の二人が Ruby で Fibonacci 数を計算するコードを書いたりして遊んでから解散しました。
Kim June 氏はこうした問題を解いて競い合うイベント(coderace) を実施しており、ぜひ 2006 年には日韓合同でやりましょう、と言っています。
高橋さんにメールを送っているが、なかなか返事がこないといって嘆いておりました(http://d.hatena.ne.jp/takahashim/20051117)。高橋さんは忙しそうなので、興味のある方は私までご連絡を (連絡先メールアドレスは下図参照)。
Ruby は韓国ではまだまだマイナーな言語ですが、日韓の Rubyist が協力することで広めていくことができるかもしれません。地理的に近いのですから、気軽に交流していければよいですね。語学や文化の壁に関しては、およばずながら私も協力します。
私はもともと東京の出身で、九州に来たのは 2 年前、福岡に来たのが 1 年前です。それから福岡の地にオフィスを構えて本格的に仕事をしているのですが、やはり東京とは環境が違っているなと思います。
できるエンジニアは多くいるのですが、イベントが少なく、横のつながりも少ないのが残念なところです。九州地区のソフトウェア業界の発展には、もっとつながりを作ることが欠かせないことと考えます。技術志向の企業は東京にいってしまう傾向がありますが、九州に残っても充分やれる、という例がでてくると良いですね。
そのなかで、できるエンジニアが集まるイベントの一つが私達の「Rubyist 九州」です。本業が Java や Javascript だったり、医師をしていたりする方も集まる異色のイベントです。
他にも AIP という団体も精力的にイベントを開催しています。なかなか面白いイベントもあり、要チェックです。日本XPユーザ会 関西支部 九州分科会 さんも色々と活動されています。
九州の Rubyist の中で、ソフトウェア作品を公開されている方をご紹介します。面白いことに皆さん「未踏ソフトウェア創造事業」の参加者なんですね。まつもとさんや、ささださんも未踏から資金提供を受けていますし、Ruby と未踏の縁は深いようです。
Ruby/Tk のメンテナをされています。とても精力的にTkの普及活動をされており、私も使ってみようかと思いました。
Ruby を Windows 実行ファイルに変えてしまう exerb を開発された方です。もうすぐ県外へ引越しとの噂ですが。
YAJB というJava Bridgeを開発しています。Java のクラスを Ruby 上で継承できたり、Java のコードを実行できる jlambda など、変態的な機能が盛りだくさんです。
Rubyist 九州はこれまでに 3 回おこなわれました。私のオフィスを利用して、気軽に皆で集まって話をするという形でやっています。とくに決まったテーマなどはなく、話したい人が話したいことを話します。プロジェクターがあるので、スライドも利用できます。
いままでは私の趣味により、半円形に椅子を配置して話し合うスタイルでやりました。テーブルがないのでカップが置けないなどの苦情もありますが、私は気に入っています。このやりかたは、ワインバーグの主催している AYE Conference で体験してから取り入れました。
円形に椅子を配置する最大のメリットは、全員がお互いの顔をみることができるので、お互いを良く知ることができることです。また、そのために全員が発言しやすくなる効果もあります。
誰かが縁台にたって講義をするスタイルでは、講師の知識を聴衆に伝える効果しかありません。議論をするとしても、講師対聴衆といった形になってしまいます。発表をするにも勇気がいりますよね。飲み会で交流をするのでしょうが、飲み会では隣近所の人と喋るだけで終わってしまいます。
円形配置は、誰もが同じ立場なので、気楽に参加・発表することができ、アジャイルな Ruby にふさわしいと思います。
Rubyist 九州の主な話題はやはり Rails です。他には、医療情報関係者が多いため医療情報の話題もありますし、メーリングリストでは Y コンビネータなども話題になっています。
前回は Rails を試して内容を発表された方が多く、永井さんの Ruby/Tk の話題とあわせて、とても勉強になりました。
ちょっと経験者の話題が多いので、次回からはもう少し初心者の方にも参加・発言して頂けたらいいな、と個人的には思っています。
とにかく、ゆるい感じでなごやかにやっています。円形にしたおかげで、初回参加者でも気軽に発言できますし、どなたでもお気軽に参加頂けるムードです。
ウェブサイトとかは特に用意しておらず、全ての議論はメーリングリスト上で行っています。参加希望の方はメーリングリストにご参加ください。
といったメールを送っていただければ、参加できます(qwikWeb です)。
いまのところ毎月、福岡市内で開催しております。次回は、
今回は各地の Ruby 事情をレポートしてみました。 もし韓国や九州の Rubyist に興味があれば、ぜひ私にコンタクトしてみてください。
こうしたグループが日本各地、世界各地にできたら楽しいですよね。 皆さんも Rubyist の集まりを主催してみませんか?
Ruby に貢献する方法は技術だけではないのですから。