書いた人:日本 Ruby の会 助田雅紀
去る 2004 年 9 月 4 日、新宿にて オープンソースカンファレンス 2004 が開催されました。 プログラムの一つとして、日本 Ruby の会が企画した「Ruby のことを考えて みる」というテーマの BoF が行われました。当日の模様をレポートします。
BoF 開始直前に日本 Ruby の会会長の高橋さんと話す機会がありました。 高橋さんは、LL Weekend と比べるとオープンソースカンファレンスの参加者は一般的な層の人の割合が多 いような気がする、BoF の参加者も Ruby を知らない人の方が多いんじゃないか、 会場が静まりかえったらどうしよう、などとちょっと心配していたようです。
また、急遽、オープンソースカンファレ ンスに参加することが決まったため、準備をする時間が十分でなく、プレゼンテー ションの資料を用意できなかったことも気にしていたようです (高橋さんならではの、インパクトのある巨大文字 HTML プレゼンが見られなかったの は残念です)。
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BoF は、高橋さんの 「日本 Ruby の会」 発足の 挨拶、そして、 (高橋さんが気にしていた) Ruby を知っている人、使っている 人がどのくらいいるかというアンケートから始まりました。 幸いなことに、BoF 参加者のほとんどが Ruby を使っていると挙手されていたよ うです。
まず、LL Weekend でも話題になった Ruby を仕事で使いたいけれど、使えない のは何故かというテーマが取り上げられました。使えない理由、使っている事例 を高橋さんが参加者に聞いていくというインタビュー形式で BoF は進んでいきま した。
使えない理由として挙がったのは、次のような項目です。
これは、よく聞く話ですね。 Ruby を使えるのは自分だけで同僚は使えないので、 仕事で Ruby を使えないという意見です。
お客さんの環境によっては、セキュリティなどの面から、CD-ROM ドライブが使え なかったり、ハードディスクにソフトウェアをインストールできなかったりする場合があり ます。唯一利用できるのは、フロッピーディスクだけという場合、Ruby がフロ ッピーディスクに収まらないため使えないという意見です。 1FD Linux ならぬ 1FD Ruby があれば便利かもしれません。
Ruby の書籍が何冊か出版されているとはいえ、オンラインドキュメントが、まだ まだ少ない。仕事をしているときにちょっと調べようと思っても、参考になるサ イトが少ないという意見です。 書籍を買う (周囲の人間に買わせる) のは、値段が高くてつらいという意見もあり ました。
ドキュメントを充実させるという点で、日本 Ruby の会として何らかのサポートを していくのかという質問も出ました。高橋さんは、「具体的なことは何も決まっ ていない。サポートできることがあれば、考えていきたいと思う。」と回答して いました。
開発は自分の会社で行うが、開発後の保守をお客さん自身が行う場合、お客さん の方が開発言語を指定するため、 Ruby を使えないという意見です。
これは、1. とも関連する話かもしれませんが、自分が開発できても、保守できる 人がいない。また、Ruby のアプリケーションを保守できる会社が他にないため、 お客さんが Ruby を嫌がるという意見です。 逆に、これはメリットでもあるという意見がありました。他の会社が保守できな いからこそ、自分の会社に保守の依頼が来る。保守も含めた次のビジネスにつな がるという意見です。
Windows 環境では、mswin32 版、cygwin 版、mingw32 版、bcc32 版などがあり、 どれを使っていいのかわからないという意見です。
使っている事例としては次のようなことが挙げられました。
DNA の塩基配列を解析するために Ruby (BioRuby) を 使用しているという事例がありました。 ライブラリのバージョンによって動作が変わってしまい、苦労したという話も出ま した。
大量の顧客データを扱うために Ruby を利用したという事例です。 Perl のコードは書きづらく awk だとちょっと集計が難しいような場合に、Ruby があって助かったという話でした。
Java のソースを一から書くのは面倒なので、Java のソースのひな型を自動生成す る Ruby のプログラムを書いて使っているという事例です。
この他に、データの整合性のチェックや、HTML の解析、パフォーマンスの測定に 利用しているなどの意見が出ました。
使っている事例が、ある程度出された段階で残り時間がわずかとなりました。そ のため、今後どうすればいいのかという点について、深い議論には至りません でした。
短い時間の間に出たのは、次のような意見です。
Ruby を活用した事例、実績があれば、仕事でも使いやすくなる。開発言語として Ruby を採用する道も開けるのではないかという意見が出ました。
Ruby のサンプルコード、初心者にも優しい解説が書かれているサイトがあれば、 もっと使われるようになるのではないかという意見です。
海外で Ruby がどのように使われているのか知りたいという意見です。 また、海外でも使われていることが認知されれば、より広く Ruby が使われるよう になるのではないかという意見もありました。
この他に、Perl なら開発費 100 万円だけど、Ruby なら 80 万円でできると 言ってお客さんを口説く、という過激 (?) な意見や、使用する言語を気にしな いお客さんであれば、Ruby を使っても問題にはならないという意見が出ました。
残念ながら、時間が短かったため、活発な議論や深い議論には至らなかったよう に思います。また、明確な結論も出ませんでした (無理に結論を出す必要はあり ませんし、そもそも結論なんてものは無いのかもしれません)。 ですが、高橋さんの当初の心配は杞憂に終わり、その場が静まりかえることもあ りませんでした。
今後の日本 Ruby の会の役割や方向性、また、Rubyist Magazine に期待されてい るものが何かを考えるためのヒントも得られたのではないかと思います。 そういう意味で、日本 Ruby の会が企画した今回の BoF は、意義のあるものだっ たと言えるでしょう。
日本 Ruby の会 助田雅紀
Ruby には、名前が ruby であった頃、BEGIN と END が無かった頃から、お世話 になってます。原稿を一つ書きました。これで安心して、自分のサイトでラ ノベや猫やごはん……じゃなくて、ミステリの感想を書くことができます。